いよいよ創造的思考について考えてみよう。
創造という行為は、何もないところから突然の閃きによってすばらしいアイディアを生み出すといった、つかみ所のないもののように思われがちだ。
事実、あるシンガーソングライターなどはそれを「降りてくる」と表現する。天の神から授かるようなイメージだ。
閃きというのはスーパーコンピューターのように、あるいはそれを超える処理能力に匹敵する素早い思考が脳の中で起こるため、本人でさえ天から降りてくるように感じるのかも知れない。
※しかし、スーパーコンピューターに喩えるのは過言かも知れない。本当は閃きが起こる前の思考プロセスに時間がかかっていても、錯覚によりそれが一瞬だったように感じてしまうのではないか。
思いついた瞬間に特別な興奮が脳内に発生し、直前まで悩んだ時間のことを忘れてしまうような気がする。
では、本当に何もない全くの無から何かを生み出す力を、人は持っているのだろうか?
創造や発明など、確かに世の中になかったものを生み出すことがある。しかし、脳の活動として本当に何もないところから突然思いつく訳ではないと思う。
そして、ここが大切なのだが、世の中に存在しなかったものを生み出すことだけが創造ではない、ということだ。
他人から見て突拍子もなく、常識や既成概念から外れていればいるほど目立つわけだが、目立たない小さな創造もたくさんある。
では、小さい創造とはなんだろう?
その1つは、
「矛盾する組み合わせを合理的、かつ高い次元で解決する。」
という問題解決を行う思考ではないだろうか。
「高い次元で解決する」という点に飛躍があり、平たく言えば発想の転換が必要で、その飛躍を思考のプロセスとして更に分析して分解することは難しく、不可能な場合もあるだろう。
現時点ではまだ確信が持てるほどの結論ではなく仮定とするが、定義を
「創造とは問題の解決策を考案するための思考のプロセスで、それ以上細かく分解できない飛躍的な思考を伴うもののこと」
としたい。
前回の記事で、過去の記憶を引き出すタイプとして2つ挙げた。
- 単純なインデックスを脳内に作るタイプの人は、同じ記憶を比較的直線的にしか引き出すことができず、知識の応用範囲が狭い。
- 縦横無尽に様々に関連づけられたインデックスを脳内に作る人は様々な知識を応用的に引き出すことが可能。
そして、最初の記事ではエンジニアを、
「主に直感を働かせ、そこから論理的な問題の解を導き出すタイプ」と
「知識の中から答えを見つけて導き出すタイプ」に分類した。
前者の直感優先タイプのエンジニアの場合、その直感、すなわち創造的思考を伴う場合であっても、結局のところ知識の中から答えを見つける行為が伴っていると言えるのではないだろうか。
創造は結局のところ自分の中にある知識の組み合わせなどにより行っているからだ。
話がややこしくなってしまったが、最初の記事の分類は、直感タイプが知識タイプを完全に含んでしまっているという意味で不適切だったということになる。
知識の引き出し方、引き出した知識の利用の仕方、そこに差異の本質があり、その差異の中に創造的思考が含まれるか否か、そこに重要な違いがある。
最初の記事でのエンジニアのタイプ分けは、
- 問題の解決において創造的思考を働かせる(働かせようとする)タイプ(A)
- 問題の解決において創造的思考を働かせない(働かせようとしない)タイプ(B)
と分類し直した方が良さそうだ。
(つづく)
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